2000/07/08更新
今日のエッセイ
初体験

夏、波打ち際が、青白く光ることがある。
船舶の航跡、引き波も同じように光ることがある。
離島行きの船やヨットだとよく見ることができるらしい。
夜光虫の光だ。
夜光虫は、1mmにも満たない、プランクトン。
大量発生すると、赤潮の原因にもなる。
今、日本本土でこの光を見ることは、ほとんど無理だろう。

20年程前の今頃、大学のヨット部に入部し、練習に参加していた。
合宿所に夜着いた僕が見たのが、夜光虫で光る海岸線だった。
初めてその光景を見た僕は、天変地異の前触れか何かと思った。
動転している私に、先輩は、海水パンツを干しながら平然と、
「夜光虫だよ」と一言。
夜、海岸が見える場所に居るコトなんて、ほとんど経験がない僕にとって、
それは衝撃的な光景だった。
波打ち際を歩くと、足跡が青白く光る。
不思議な光景だったが、言葉に表しようのない、感動的な光だった。

久しぶりに大学ヨット部の練習に参加した。
初めて参加するという、新入部員(もちろん一年生)がいた。
午後から風が落ち、曇りながらも海面も静かで、
初めての彼には絶好のコンディションかと思われた。
しかし、あまりの静かな海に、彼は船酔いをしてしまったのだ。
初めての経験では、緊張も手伝って、えてして事件が起こるものだ。
彼は、記念すべきヨット初挑戦の海で、海中の魚に餌を撒いてしまった。
僕の夜光虫同様、彼にとってもまた、初めてのヨットは、
きっと思い出に残る経験だったに違いない。

初体験は、これから始まる新しい世界への入り口。
初めての出産は、新パパ・ママにどんな世界を見せてくれるのだろうか。

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