2000/06/19更新
今日のエッセイ
大食堂

新大阪駅に着くと、改札へ向かってエスカレーターに乗った。
すると、懐かしい臭い。
何処かでかいだことのある、この懐かしい臭い。
そうだ、思い出した。
デパートの大食堂だ。
今ではデパートに大食堂を置いている処なんて、無い。
でも、今から20年くらい前までは、デパートの最上階は大抵大食堂だった。
カツ丼だってラーメンだって、エビフライだって、
和だろうが中華だろうが洋食だろうが、何でもあった。

そして、フロア全体が、言い様のない美味しそうな臭いで一杯だった。
食堂の前のショーウィンドウの前では、目移りしてなかなか決めきれず
ガラスに長いこと顔をくっつけていたものだ。
大食堂のもう一つの楽しみは、ソフトクリーム。
銀色の太い針金を曲げて作ったような、ソフトクリームの台に、うやうやしく鎮座して、食後に登場する。
子供の頃は、デパートに行くのも一大イベントだった。
今で言えば、テーマパークに行くようなもの。
身近な非日常、ソフトクリームなんて、それは大変なごちそうだった。
デパートの大食堂は、僕の子供の頃のあこがれの場所の一つであったことは
間違いない。

今、大食堂に代わる存在は何だろう。
大人になって、懐かしいと思える子ども達のあこがれの場所は、何処だろう。

流石は、食い倒れの街大阪。
大阪は、日本というデパートの、大食堂であり続けているのだろう。

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