2001/10/4更新
今日のエッセイ
空飛ぶはんぺんと、焚き火とふくらはぎ

黒い陰が、闇に包まれようとしている森の上空を横切った。
「ぎー、ぎー」
闇の中に、小さな泣き声が聞こえる。
次の瞬間、五角形のはんぺんの様な物が、こちらに迫ってくる。
来た、と思ったら、頭上で反転し、
後ろの樹齢1000年を越える杉の幹にとりついた。
生まれて初めて目にする、ムササビの飛翔。
幹に取りついたムササビは、大きなリスにしか見えないが、
ひとたびジャンプし、空中にその身を投げ出すと、
ちょうどハンググライダーのよう。
場所は、河口湖畔の浅間神社。
この神社の森には、5〜6頭のムササビが暮らしているという。

「近頃、忙しいばかりで何処にも行っていないし、どっか行こうか」
夜の11時を過ぎて、そんな話になり、どうせなら自然の中の、
キャンプ場みたいなところが良いということになり、
訪れたキャンプ場では、ムササビウォッチングに参加できたのだ。

ムササビを見てコテージに戻り、バーベキューで食事をすますと大人の時間。
テーブルの脇では、焚き火の炎がぱちぱちと赤い炎をあげている。
初秋とはいえ、山間の夜は焚き火がないと、少し寒い。
ワインのボトルが空になるころ、焚き火の薪も全部燃え尽きた。
日付が変わり、暖房の入ったコテージで眠りについた。

夜明け前、激痛で目が覚めた。
久しぶりの渋滞で酷使した右ふくらはぎが、つった。
痛かった。

過去のエッセイ
新しいエッセイ

 

伊達明のエッセーTOPへ