2000/07/18更新
今日のエッセイ
天王洲

空に向かって伸びる高層ビルにかこまれて、そこには円形劇場のような空間が有っ た。 見上げると、梅雨の晴れ間の青空。
ビルを背にして正面を見ると、新幹線が運河の向こうを走り、
運河にはとってつけたようなハーバーと、レストラン。
それに、いかにも飾りもののようなクルーザーが停泊している。
運河に面した岸壁は、木の床でできたボードウォーク。

いかにも人工的な空間ではあるが、そこそこに快適な空間。
カフェでコーヒーを注文し、円形劇場の様なテラスに出て、くつろぐ。
船の汽笛と新幹線の警笛、そして、飛行機のジェット音を聞きながら、
空を見上げてゆっくりと目を閉じる。
青空に吸い込まれるような錯覚に陥りながら、
やがて目の前は赤い網膜の残像だけになる。
そして、赤い残像も消え、目の前に見えてくるのは、
暗闇に輝く銀河のような、不思議な世界。

暗闇の銀河は天の渦。
そう、ここは天王洲。

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