2000/10/02更新
今日のエッセイ
父親の記憶

僕の身近には、30を過ぎても独身の女性は多い。
そして、彼女たちと話をしていると決まって出る年の話。
でも、僕は女性は30からが魅力的だ、と本当に思っている。

子どもの頃、会社帰りや接待帰りに酔っぱらった父親は、
母親を飲んでいるところに呼び出した。
幼い僕と、弟は、家で留守番する事もあったが、一緒に連れ出され、
両親が飲んでいる横で、おでんや、焼き鳥のご相伴に預かっていた。
小料理屋等では、出汁巻き卵を作ってもらうのが、楽しみだった。

毎年、年の暮れになると、飲み屋の人たちが、「つけ」の集金にやってきた。
僕たちでさえも、顔見知りの人たちが、集まって、
うちで食事をし、それぞれに、つけのお金を持って帰っていった。
のどかな、取り立て(というようなニュアンスのものではないが)風景だった。

子どもの頃に連れ出された歓楽街の橋の上には、
いつも乞食のおじさんが一人と、大道芸人が一人、いた。
酔った父親は、その勢いで、大道芸人にちょっかいを出したことがある。
芸人は怒り、「酔っぱらいは、あっちに行け」と罵声を浴びせた。
父親も怒ったが、母親に制止されて、不機嫌なまま帰った。

そんな記憶がこの年になっても、鮮明に残っている。
僕の子ども達には、父親のどんな記憶が残るのだろうか。

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