2001/11/8

スポンジバス

産後に息子と病院からめでたく退院をする時、看護婦さんから「どうやって赤ちゃんを風呂にいれるか」の実技教育をしてもらった。ベビーバスにぬるま湯を張って、ウオッシュクロスという小さな布でなでるように洗う。ここまではおそらく日本でも同じでしょう。しかし彼女の口から出てきた言葉は、「赤ちゃんはそんなに汚れるものでないから、この方法は特別なのよ。普通はタオルの上に寝かせてスポンジで拭くだけでいいのよ。おへそからばい菌も入りやすいから、そうねえ1ヵ月はこれで大丈夫」。
「拭く?」
「そうスポンジにぬるま湯を含ませて、こうやってポンポンポンって優しくね」とこれも実演してくれた。
そこで初めてスポンジバスというのを知った。
確かにふにゃふにゃする首を支えながらお風呂にいれるのは大変だけど、1ヵ月「スポンジ」だけで済ますのはちょっと抵抗があった。お尻だって1日に何度も汚れるし、キタナイ。それに赤ちゃんはベビーバスで手足をぐたあっと伸ばして気持ち良さそうな顔をするものだと思っていた。私達は1週間、看護婦の言い付けを守ったが、その後は我慢できずほぼ毎日風呂に入れた。

風呂にまつわるもうひとつのエピソード。
主人の実家に退院直後お世話になった時、義母がどうしても息子にしてやりたくて仕方がなかったことは「台所の流しで赤ちゃんを風呂に入れる」。これを聞いた時、私は飛び上がりそうなくらいびっくりしたが、米国の家庭ではかなり一般的らしい。ベビーバスが必要ない合理的な発想からかな。義母はこれまでの孫にはもれなくそうしてきたとのこと。お芋や食器とは違うし、いろんなバイ菌がうようよしているに違いない所に、産まれたばかりの、抵抗力のない息子を“ちゃぽん”と入れる勇気と気持ちの余裕は、その時の私にはなかった。
私は入れましょうと言えず、義母はあっさりと引き下がり、これは実現しなかった。1年ほど経って偶然、育児雑誌に嫁姑が仲良く赤ちゃんを台所で風呂に入れる投稿写真を見た時、そこに義母と息子と私を置き換えてみた。入れてもよかったかな、とちょっとだけ思った。


アメリカからのこそだて奮闘記


日本で大手企業の広報課長を務めているときに、アメリカ人の英会話教室の先生と結婚、渡米。日米の文化の違いに悩まされながら、子育てに奮闘中。

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