2000/07/28更新
今日のエッセイ
CASA DEL JAPON

六本木通りを、溜め池から渋谷に向かって車を走らせ、
テレ朝通りの次の信号で、左に折れる。
狭い一方通行路を、50mも進まないところの右側に 数年前、
赤い扉の古い佇まいの家があった。
いや、正確には、古い家を改造したレストラン。
名前もズバリ、CASA DEL JAPON(カサ・デル・ハポン、日本の家)。
赤い玄関ドアまでは、十段ほどの石の階段。
その両側には、和紙を巻いてロート状にしたランプシェードの中心に、
蝋燭がゆらゆらと柔らかい光を放っている。

赤いドアを開け、六席しかないバーのカウンターに腰をかけた。
ビールを飲みながら、待ち人の到来を待つ。
後ろのテーブル席には、おそらくTV関係の人だろう、
いかにも業界関係の臭いを漂わせた、中年の男性が三人。
その後に入ってきたのは、これまた場違いな雰囲気の、若い女性の三人組。
薄暗い、静かな空間には、三組の、それぞれになにも共通する空気のない客が、い た。

仲間が揃い、席を2階の個室に移し、にぎやかな場となった。
やがて、例のごとくに、ムラちゃんが行動を起こした。
彼女の隣に、いつの間にか席を移し、しきりと口説きにかかっている。
ついに、携帯電話の番号を聞きだした様子だ。
他のみんなは、いつものことと、動じない。

3本目のバーボンのボトルが、1/4程になった頃、お開きとなった。
それぞれにタクシーに乗り込み、'家'を後にした。

ムラちゃんは、その夜、すぐさま携帯に電話したらしい。
きっと京都生まれの彼は、電話口で「スキヤ、スキヤ」いうてたんちゃうやろか。

日本の家は、数寄屋、と相場は決まっている。

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