そもそも非認知能力とは?

認知能力は簡単に言うと、認知、つまり知識や記憶力の能力です。現在の日本ではテストの点数や学力に直結する能力とも言えるでしょう。

これに対して非認知能力とは、人間の社会的な能力。やる気や思いやり、アイディア力や創意工夫、人間関係の構築や自己管理能力など、社会を上手に生き抜いていくために必要な能力と言えます。

 

日本はまだまだ学歴社会。「いい大学に入り、有名な会社に就職する」。これがわが子を幸せにする道だと、思い描いている親も少なくないでしょう。

しかしながら、現代は有名大学や有名企業に入ることができたら、生活が安心して保障され、幸せに暮らせるかと言うとそう単純ではありません。何よりも、社会と文化の変化の速度が速すぎて、一つの企業が数十年間、同じテーマを続けることが極めて困難になってきています。せっかく入社しても、いつの間にか自分のポストも会社そのものもなくなっている、ということがしばしばこれから起こります。そういう時代に大事なのは臨機応変力とでもいえる力で、これが非認知能力です。ですから、これを育てないで認知能力だけを高めていいポストを狙う生き方は逆に不安定になってきているといえるわけです。

 

そう考えると、非認知能力の豊かさの大事さがよくわかるとおもうのですが、それはこれまで日本のモノづくりを担ってきた大きな企業の中心メンバーを見てもよくわかります。たとえばホンダの創設者、本田宗一郎氏は小学校しか出ていないし、パナソニックの創設者の松下幸之助氏の最終学歴は小学校中退だそうです。多くのモノづくりの担い手は、学歴=点数偏差値=認知能力を高めて、それで勝負してきたのではなく、いいものを真剣に作りたい、この人を楽にしてあげたい、暮らしを改善したい……。そんな発想=非認知能力が技術を生み出し、産業を発展させてきたのです。

 

非認知能力は「遊び」から育まれる

ではどのようにしたら、子どもの非認知能力は育まれるのでしょうか。

子どもは遊びの中、暮らしの中で非認知能力を身につけていきます。今は公園には遊具が置かれていますが、遊具があると、その遊具で基本的には決まった遊びをするわけです。滑り台があって子どもたちが複数いたら、基本的には上から順番に滑り降りなくてはならないでしょう。

 

でもわが子だけだったらどのように遊ぶでしょうか?滑り台の下から山登り気分で登ってみたり、腹ばいでスーパーマンのように上から滑り降りてみたり、公園の雑草を実験のように上から滑らせてみたり……。いろいろな遊び方をするのではないでしょうか。

 

何もない広場で友だちと遊ぶとなれば頭を使わなくてはなりません。まずはかけっこをしてみる。木があれば、あそこでタッチして早く帰ってきた方が勝ちなどの遊びが始まるかもしれません。追いかけっこが鬼ごっこになったり、色鬼になったり、子どもは次にどんな風に遊んだら楽しいかと、試行錯誤していきます。

手ごろな木の棒があれば、それをペンのように使って地面に絵を描くかもしれません。〇をいくつか描いて、けんけんぱをしてみたり。棒が2本あれば、戦いごっこに発展するかもしれません。

 

時にうまくいかなかったり、ケンカになることもあるでしょう。そのような経験を通して、もっと楽しくできないか、もっとうまくできないかと試行錯誤します。

たくさんの体験をする中で、子どもは遊びを工夫したり、相手に伝えるコミュニケーション力を身につけていきます。

親は口を出さず、できるだけ見守ること

このような試行錯誤は赤ちゃん時代から始まっています。親は危ないから、ケンカになりそうだからと先回りせず、できるだけ口を出さずに、見守ることが大切です。

「失敗から学ぶ」と言われますが、人生に失敗なんてありません。うまくいかなかっただけです。でもどうしてうまくいかなかったか立ち止まって考えたら、次はこうしよう、ああしようというアイデアがわいてきますよね。いいアイデアが生まれたのは、うまくいかなかったからです。その意味で人生ではうまくいかない体験が大事で、そこから大事なことを学ぶことが生き方上手なのです。つまり失敗(うまくいかないこと)が大事ということです。失敗も子どもにとって大切な経験ですから、たくさん失敗させてあげましょう。ただしそういうときは、親は口出しせず、見守ることが大切です。

 

そういう意味で子どもの遊ぶ力を豊かに育むことが大事なのですが、遊ぶ力そのものを、親が育てることはできません。自分で試行錯誤して身に着けるしかありません。親としてできるのは、ご飯を食べさせ、清潔や病気の世話をして、愛情を注がれているという実感を子どもに与えることです。

 

「木に登ってはいけません」「ボールを投げてはいけません」公園は禁止事項だらけです。子どもが創意工夫したり、子どもが自分で決める世界が、どんどん減ってきています。

大人になり、社会に出ればさらに禁止事項とルールだらけです。だからこそ、子ども時代は自由に考え遊べる時間と空間が必要です。

 

仕事力が高い人は、「こうした方がいい」と気づき、チャレンジしている人です。うまくいかなければやり直し、試行錯誤できる力を身につけ、発想力を豊かにするためには、子ども時代に子ども主体でたくさん遊ぶことが必須です。それこそが非認知能力を育むことにつながります。