育休制度は「家族だけのもの」ではなくなった

15年前、両親が交替で育休を取り、子どもを迎えに行くのが当たり前という様子が当たり前でした。この基本構造(子ども1人につき480日、うち390日は所得の約80%、残り90日は定額給付)は今も変わりませんが、ここ数年でさらに柔軟な制度に進化しています。

 

祖父母や友人にも育休を「ゆずれる」時代に

2024年7月、スウェーデンは世界で初めて、法的な保護者ではない人…つまり祖父母や親しい友人…にも有給の育休日数を譲渡できる制度を導入しました。両親は480日のうち最大45日を、親権を持たない第三者(社会保険の対象者であることが条件)に譲ることができ、ひとり親家庭の場合は最大90日まで譲渡が可能です。スウェーデンでは、法的な保護者ではない祖父母や友人にも有給の育児休業日数を譲渡できるようになりました。この制度は、家庭により柔軟な選択肢を与え、仕事と家庭の両立をしやすくすることを狙いとしています。共働きが当たり前になったスウェーデンでも、祖父母世代がキャリアの真っただ中にいることが増え、「昔ながらの祖父母サポート」を制度面から後押しする形になったといえそうです。

 

看護休暇(VAB)の対象がさらに拡大

子どもの看病のために仕事を休んで給付を受けられる「VAB(Vård av barn)」も、2026年1月から対象が広がりました。従来は子どもが病気のときに限られていましたが、現在は、子どもの特別なニーズについて学校・保育園のスタッフと話し合う面談への出席、子どもの病気や障害に関する会議への参加、児童相談に関する社会福祉サービスの調査・面談への同席なども対象になっています。2026年1月から、スウェーデンは休暇給付(VAB)の対象範囲を拡大し、これまで子どもの病気に限られていた利用条件に、学校や保育園でのスタッフ研修を伴う面談、子どもの病気や障害に関する会議、社会福祉サービスによる子どもの保護・支援の調査への参加という3つの新しい場面を加えました。特別な支援が必要な子どもを持つ家庭にとっては、大きな後押しとなる改正です。

 

パパの育休参加率は9割超、それでも残る”日数の差”

15年前の取材でも、パパが仕事帰りに子どものお迎えをする姿が印象的でした。現在、スウェーデンでは父親の9割前後が何らかの形で育休を取得しているとされ、育休が「取るかどうか」ではなく「どう分担するか」の話題になっている点は変わっていません。

一方で、研究者たちが指摘しているのは、育休を「取る」父親は増えても、実際に使う”日数”の男女差はなかなか縮まらないという課題です。スウェーデンの育児休業制度は、1974年の導入以来何度も改革され、今世紀の変わり目には女性の大半が労働市場に参加し、男性もほぼ全員が育休を利用して育児に多少なりとも関わるようになりました。そのうえで、この20年の変化は柔軟性が増した面(育休期間の延長や、両親以外も利用できるようになったこと)と、柔軟性が減った面(年齢制限の導入や所得代替率の引き下げ、両親で分け合える日数の縮小)の両方があり、現在は各親に3か月ずつ割り当てが確保されています。つまりスウェーデンは、”両親のどちらも使える日数”を減らし、”父親専用の日数(パパクオータ)”を増やすことで、あえて分担を進めてきたわけです。

 

ちなみに日本も、この15年で大きく動きました。2022年に「産後パパ育休」制度が始まったこともあり、男性の育児休業取得率は2020年度に初めて10%を超えた後、2021年度13.97%、2022年度17.13%、2023年度30.1%、2024年度は40.5%へと急上昇しています。スウェーデンとの差はまだ大きいものの、”夫婦で交替で育休を取るのが当たり前”という景色に、日本も少しずつ近づいてきているのかもしれません。

 

体罰禁止から45年超。意識はほぼ完全に転換

1979年の体罰禁止法から45年以上が経ち、スウェーデンでは体罰そのものが社会からほぼ姿を消しました。15年前は「体罰支持は10%弱」でしたが、その後の調査ではさらに数字が下がっています。1960年代には約95%の家庭が子どもへの体罰を「する」と答えていましたが、体罰禁止法の成立から40年が経った時点で、その割合は2%まで減少しました。また別の調査でも、過去1年間に子どもを叩いた親の割合は1980年の27.5%から2011年には2.8%まで減少し、子どもの虐待死も1970年の15人から2010年には4人へと減少しています。啓発活動と法制度が両輪となって、「叩かない」がもはや”選択肢のひとつ”ではなく”当たり前”として定着した様子がうかがえます。

 

そして、”対岸の出来事”だった話が日本にもやってきた

この15年で、日本でも体罰を法律で禁止する大きな動きがありました。

2019年に成立した改正児童虐待防止法により、2020年4月から親権者による体罰が法律で禁止されました。さらに、しつけの口実として虐待を正当化しかねないと長年批判されてきた民法の「懲戒権」規定についても、2022年に民法が改正され、2024年4月1日から懲戒権の規定が削除されました。代わりに、親権者は子どもの人格を尊重し、心身の健全な発達に有害な影響を与える言動をしてはならないという体罰等の禁止規定と、子の人格の尊重に関する規定が新たに設けられ、体罰が明確に禁止されました。

罰則規定はなく、スウェーデンのように国を挙げた啓発キャンペーンが定着しているとは言い難いのが現状ですが、法制度としては「体罰によらない子育て」という同じ方向を、日本も歩み始めています。