子どもが保育園や幼稚園に入園するとき、あるいは新しい学年に進級するとき、親の胸は期待と不安でいっぱいになります。「新しい環境に馴染めるかしら」「お友達とうまく遊べるかな」「毎朝泣かれたらどうしよう」といった心配は、我が子を大切に想うからこそ溢れてくる自然な感情です。

新しい一歩を踏み出すこの時期、子どもたちの心の中では何が起きているのでしょうか。そして、親はどのように寄り添い、向き合っていけばよいのでしょうか。大切なポイントを3つの視点から紐解いていきましょう。

 

「行き渋り」や「赤ちゃん返り」は順調に育っている証拠

新しい生活が始まると、それまでスムーズに登園していた子が急に「行きたくない」と泣き叫んだり、家で甘えが激しくなる「赤ちゃん返り」を見せたりすることがあります。せっかく成長したと思ったのに、後戻りしてしまったようで焦るかもしれません。しかし、これは決して悪いことではありません。

子どもなりに、新しい環境(社会)で一日中パワー全開で頑張っているのです。保育園や幼稚園という「外の顔」で緊張し、我慢を重ねているからこそ、一番安全で安心できる「おうち」に帰ってきた瞬間に、その緊張の糸がプツリと切れてしまいます。

家でわがままを言ったり、抱っこをせがんだりするのは、外で減ってしまった「心のエネルギー」を親からチャージしようとしているサインです。つまり、親を100%信頼して心をさらけ出せている証拠であり、順調な心のメカニズムと言えます。

まずは「そっか、行きたくないんだね」「新しいお部屋、ドキドキするよね」と、子どもの不安な気持ちを言葉にして丸ごと受け止めてあげてください。理由を聞き出したり、無理に励ましたりする必要はありません。ただ「あなたの気持ちを分かっているよ」と伝えるだけで、子どもの心はすっと軽くなります。

 

園での様子と「おうちタイム」のメリハリを大切に

入園や進級の初期は、つい「今日はお友達と何して遊んだ?」「泣かないで過ごせた?」と、園での様子を細かく聞き出してしまいがちです。親としての心配からくる質問ですが、子どもにとっては園での緊張感を家にまで持ち込まれるように感じ、負担になってしまうことがあります。

大切なのは、家を「100%リラックスできる安全基地」にすることです。園での出来事は子どもが自ら話し出すのを待ち、話してくれたときは「楽しかったんだね」「頑張ったね」と共感することに徹しましょう。

そして、家にいる時間は意識してスキンシップを増やしてみてください。

 

* いつもより少し長めに抱っこをする

* 手を繋いで絵本を読む

* お風呂で体を優しく洗ってあげる

 

こうした肌と肌の触れ合いは、子どもの脳内に安心感をもたらすホルモンを分泌させ、不安を和らげる絶大な効果があります。

新しい生活に慣れるまでは、おうちでのタイムスケジュールを詰め込みすぎないこともコツです。習い事を少しお休みしたり、平日の夜の家事を少し手抜きしたりして、親子でゴロゴロと過ごす「何もしない時間」を意識的に作りましょう。親の心にゆとりが生まれると、それは鏡のように子どもの安心感へと繋がっていきます。

 

親の不安は子どもに伝わる!笑顔の「いってらっしゃい」

子どもは驚くほど親の表情や雰囲気を観察しています。特に母親や父親の不安な空気には敏感です。送り出すときに親が心配そうな顔をしていたり、「大丈夫かな…」とおろおろしたりしていると、子どもは「ここは怖い場所なんだ」「パパやママを困らせる悪いことが起きるんだ」と察知し、ますます不安を強めてしまいます。

朝、園の玄関で子どもに泣かれると、後ろ髪を引かれて何度も振り返ったり、バイバイを長引かせたりしたくなりますが、これは逆効果になることが多いです。

登園時は、あえて「笑顔で、短く、きっぱり」と送り出すのが鉄則です。「たくさん遊んできてね!」「お迎えの時間に必ず来るからね!」と、明るくハイタッチをして、先生にバトンタッチしましょう。親が笑顔で堂々としている姿を見せることで、子どもは「パパとママが笑顔だから、ここは安心な場所なんだな」と信じることができるようになります。

子どもと離れた後、車の中や帰り道でホッと涙を流すお母さんも少なくありません。園の先生たちは、お父さんやお母さんが見えなくなった後、子どもたちが案外ケロッと切り替えて遊び始める姿をたくさん知っています。プロである先生方を信頼し、預けたらドーンと構えて、親自身の時間(仕事や家事、リフレッシュ)を過ごしましょう。

 

一歩一歩、家族のペースで

入園・進級期のトラブルや不安は、ずっと続くわけではありません。ゴールデンウィークを過ぎる頃、あるいは夏休みを迎える頃には、どの子も少しずつ新しい環境に自分の居場所を見つけ、頼もしい笑顔を見せてくれるようになります。

周りの進み具合と比べて焦る必要は一切ありません。子どもの育つ力を信じ、家ではたっぷりの愛情で包み込みながら、親子で新しい一歩をゆっくりと進んでいきましょう。