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お互いの思いやりと日々の会話がポイント!共働き育児のハッピー戦略

お互いの思いやりと日々の会話がポイント!

共働き育児のハッピー戦略

今や専業主婦家庭よりも共働き家庭の方が増えているのが現状。とはいえ、育児や家事の主担当はあいかわらずママという家庭も少なくありません。共働き夫婦で子育てするには、どのような心がけと工夫が必要なのでしょうか?欧米の子育て事情にも詳しいお茶の水女子大学の石井クンツ昌子先生に教えていただきました。

石井クンツ昌子先生
お茶の水女子大学基幹研究院人間科学系教授。1987年~2006年カリフォルニア大学リバ ーサイド校社会学部助・准教授を務め、2人の育児を経験。日米における父親の育児・家事参加 について研究。日本のイクメン現象の実態を解明し、ポジティブ家族社会学を提唱。著書に『「育メ ン」現象の社会学』(ミネルヴァ書房)他。

 

専業主婦家庭よりも共働き夫婦が増えている

女性たちの生き方の多様化や高学歴化といった影響もあり、結婚しても働き続け、育児と仕事を両立する女性は増えています。専業主婦家庭の数よりも、夫婦共働き家庭の数が上回ったのは1997年で、それ以後は上昇傾向です。
 
共働き夫婦の場合、昼間子どもをどこに預けるかが一番の課題。どちらかの両親と同居または近居で面倒を見てもらえるとよいのですが、大都市圏は核家族夫婦が圧倒的。認可保育所への入所が困難な地域もまだまだ少なくなく、多くの家庭は、認可外保育施設、保育ママ、ファミリーサポートなど、様々な育児支援制度を利用して両立をやりくりしています。

 

共働き家庭の場合、パパの育児参加は必須条件です。「イクメン」が認知されるようになり育児休業を取得するパパは増えているものの、未だ全体の3%程度にとどまっています。育休が取りにくい、周囲に迷惑をかけるのではないかなどの理由で育休取得する人はまだまだ少なく、男性たちも理想と現実の狭間で揺れています。
 
職場環境も重要ですが、職場が変わることを待っていても時間がかかります。ここはまず、パパの意識改革からはじめましょう。

育児に関わりたいというパパも増えてきてはいますが、実父が育児に全く関わらない家庭で育った男性は、「育児は女性の役目」という固定観念を強く持っている傾向もあります。

 

パパ育児の取り組みは子どもにもママにもプラスの影響

 

アメリカでは育児制度がなくても、男性も育児をするのは当たり前。二人親家庭の場合、パパが幼児期に密に関わると、「成人後の自尊心、学業達成レベル、人生に対する満足感が高い」という研究報告があります。
パパの育児参加が、子どもの心身の健全な発育にプラスの影響をもたらし、またママ自身、気持ちの余裕ができることで、子どもに対する態度が良好になります。

夫婦で日常的によく話し合い3つのマネジメントを

共働き育児・家事をうまくやるためには、マネジメントの意識を持ちましょう。1つ目は「タイムマネジメント」で、働く時間と家事育児の時間を把握することです。
 
パパとママの勤務スケジュールがありますから、可能ならまずその見直しから。通常の出社時間、退社時間はもちろんですが、残業についてもその時間分残業する必要があるのか、毎日残業が必要なのかなど見直してみましょう。そこに、日中の登園・降園時間や保育ママやファミリーサポートさんにお世話になる時間など、子どもの1日のタイムスケジュールを重ねてみましょう。送り迎え、食事の支度、掃除洗濯などの家事、お風呂や寝かしつけなど、日によってどちらが分担するかも決めながら、1週間のスケジュールを立ててみましょう。「パパは早く帰れないから保育園は送りだけ」という発想自体も見直しを。週に1~2回または月に数回お迎えできないか考えてみましょう。夫婦がともにフルタイムなら曜日でお迎えや家事を分担すると、一方は集中して仕事を片付けられたり、帰社後に同僚との飲み会に参加するなど、スケジュールが組みやすくなります。土日はお出かけや買い物など、楽しみもプランに入れておきましょう。 

 

ネットやSNSのカレンダーで管理したり、ホワイトボードや紙に貼り出すなどすると、夫婦で情報を共有できます。

1週間の中で、パパママそれぞれの自分時間(一人の時間)を作るよう意識して、予定をカレンダーに記入しておきましょう。パートナーに子どもを預け、散歩に出かけたり、カフェで本を読むのもいいでしょう。リフレッシュできると、また子どもと笑顔で向き合えます。

1カ月単位でのスケジュール表を基本に、園の行事や家族旅行など先の予定まで管理しておくと、さまざまなことが余裕を持って準備できます。

共働き世帯数の推移

1997年以後は、専業主婦家庭よりも共働き家庭の数が上回り、以後は右肩上がりの状況。

 

資料出所 厚生労働省「厚生労働白書」、内閣府「男女共同参画白書」、総務相「労働力調査特別調査」、総務省「労働力調査(詳細集計)」
注1 「専業主婦世帯」は、夫が非農林業雇用者で妻が非就業者(非労働力人口及び完全失業者)の世帯。
注2 「共働き世帯」は、夫婦ともに非農林業雇用者の世帯。
注3 2011年は岩手県、宮城県及び福島県を除く全国の結果。

 

育児休業取得率の推移

女性が80%以上で推移しているのに対し、男性はようやく3%台と低水準。

 

資料出所 厚生労働省「雇用均等基本調査」
2011年以後調査においては、調査前々年10月1日から翌年9月30日までの1年間。

子の成長により働き方も変化。長期的なキャリアプランを

2つ目に考えたいのは「マネーマネジメント」。共働き夫婦の場合、収入が多い分つい使ってしまう傾向もありますし、総額が見えにくいこともあります。節約を気にしすぎるより家電を購入したり、ハウスキーパーを使うなどの方が、家族に余裕が生まれることもあります。子どもの成長に従っていくら必要になるか確認し〝貯めるお金”と〝使うお金”のバランスを夫婦で話し合ってみましょう。
 
3つ目は「ワーク・ライフ・バランス」です。タイムマネジメントでも触れましたが、パパママそれぞれの働き方も見直してみましょう。

子どもの成長に応じてお世話にかかる時間も変わってきますし、夫婦それぞれで仕事に打ち込みたい時期もあるでしょう。パパとママのキャリアアップや夢の実現など、5年後10年後を見通して、ワーク・ライフ・バランスを考えることが大切です。自分時間を作り出して、将来に向けて趣味や学びを始めるのもいいでしょう。人生100年時代とも言われています。働き方も含め、どんな人生を送りたいか長期的な視点で捉えましょう。

お互いに心を開きコミュニケーションを最優先

この3つのマネジメントをするためにも、夫婦のコミュニケーションがとても重要です。

 

欧米人カップルはお互いの思いや感情を口にするのがとても上手。ところが、日本人は「言わずに察する」を尊重する奥ゆかしい国民性もあり、内面を口にするのが苦手です。夫婦の会話も事務連絡に徹してしまいがち。「こうして欲しい。私はこうしたい」と伝えず、「なぜこうしてくれないのか」「なぜわかってくれないのか」と心の中で相手に不満を抱くようになり、いつの間にかお互いの思いにズレが生じることも少なくありません。

時間がないからこそ、意識して心を開き本音を語ることが大切です。週末には「夫婦ミーティング」の時間を作り、大変だと感じていること、相手への要望、自分の望みなどを伝えましょう。このときのコミュニケーション法は、相手の気持ちを責めずに受け止め、具体策やお互いの考え方で改善する方法を探ることです。

夫婦共働きで子育て家庭をハッピーに営んでいくためには、思いやりを持ったコミュニケーションと、現状から解決策を前向きに考える思考が欠かせません。


イラスト/サカモトアキコ 取材・文/中野洋子

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