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子育てに向き合う夫婦のあり方

ちょっとぎくしゃく…。ほんとは笑顔の家族でいたいのに

子育てに向き合う夫婦のあり方

妊娠中の離婚や、里帰り別居、乳幼児期の夫婦の亀裂……。2人の生活から、子どもができると、夫婦のそれぞれの考え方の違いがあらわになって、夫婦の気持ちにズレが生じることも少なくありません。どんなことに気を付けてコミュニケーションを取ったらいいのでしょう。

菅原ますみ先生
お茶の水女子大学 基幹研究院人間科学系教授。専門は発達心理学、子どものパーソナリティ発達、発達精神病理学。著書は、『個性はどう育つか』(大修館書店)、編著に『子ども期の養育環境と QOL』(金子書房)など。

 

夫婦のぎくしゃくは子どもの存在を考慮して

「以前は仲がよかったのに、子育てが始まってからなんだかぎくしゃく……」そんなご家庭もあるかもしれません。子どもの発達や子どもから見た家族、夫婦関係を考えると、夫婦仲が悪かったり、離婚に向かいそうな雰囲気というのは、あまりいい状況ではありません。
 
少し前までは、多少仲が悪くても、折り合いを付けて何とか夫婦の形を存続する傾向がありましたが、最近はちょっとしたことがきっかけで一気に離婚に向かってしまう夫婦も少なくありません。女性が経済力を付けてくると、今後、別居や離婚はもっと増えてくると思われます。夫との関係、妻との関係を考えるときはどうしても夫婦の関係だけで考えてしまいがちですが、子どもの存在や目線も考え、客観的に見てみましょう。

子どもの育ちや存在を強く意識すると、夫婦のぎくしゃくした関係をクールダウンできることもあります。
 
ギスギスして冷え切った夫婦関係になったり、離婚に向かってしまうというのは、突然そのような状況になるわけではありません。1日1日の積み重ねに、どう向き合い、対応し、適応しているかということが大事になってきます。
 
夫婦仲は家族関係の安定に大きく影響しますので、子どもにとって居心地の良い家庭環境を作り子どもの心の安定や健やかな発達を守るためにも、夫婦仲を良い状態に保つことが大切です。

家の仕事も労働と捉えワーク・ライフ・バランスを考える

まずは、夫婦の仕事と家事のバランスをチェックしてみましょう。共働き、片働き、ママやパパが専業主婦(夫)など、いろいろな形があると思います。「働いている=賃金が発生する仕事」と考えがちですが、家事も家族のための仕事(アンペイドワーク:お金が発生しない仕事)です。そう考えると、賃金労働をしているから、家事や育児はしなくていいということにはなりません 。お互いに分担してやるべきでしょう。
 
ワーク・ライフ・バランスというと、会社で働いている人が、自分の生活や育児の時間が取れるようにするという印象がありますが、ママが家事をメインでしている場合も家事労働として同じように考えましょう。パパも、仕事以外の自分の時間が欲しいように、ママも、子育てと家事から離れる自分時間を持てるようにしましょう。

それには、パパとの相談が欠かせません。今や平均初産年齢は約30歳。ママも出産前に働いていた人がほとんどでしょう。夫婦で、「子育てプロジェクト」と考え、どうやって2人で乗り越えて行くか、ビジネスライクな視点で考えてみてはいかがでしょうか。
 
恋人時代は全く気が付かなかったのに、結婚して一緒に暮らすと「この人はこういう行動をするんだ。こういう考え方なんだ」と気づくこともあるでしょう。さらに子育て期間は、今まで生きてきたそれぞれの異文化をすりあわせる作業をすることになります。子育ての場面を通して、夫婦の考えが違うこともあることを理解し、お互いを尊重しながら、わが家の方針を見つけていくようにしましょう。

パパの子育ては夫婦愛にも影響を及ぼす

子どもの発達上も、パパとの確かな愛着関係を結ぶことが大切です。それにはママ中心の子育てだけでなく、パパも子育てしないと愛着は育っていきません。パパが子育てするモチベーションを上げるには、子どもになつかれることが大切。それには、やはりある程度の時間が必要です。
 
0歳児から子育てしていると、赤ちゃんも安心してパパに身をゆだねるでしょう。たまにしか子どもの世話をしないと泣かれてしまうかもしれませんが、ここをあきらめずにお世話をすることで、赤ちゃんも信頼してなついてくれるようになります。そうするとパパもうれしくて自主的に子育てしてくれるようになるでしょう。いい結果が見えると、どんどんやりたくなってくるのは仕事も子育ても同じこと。0歳児のときのパパの子育て体験が、1歳、2歳へとつながっていきます。子どもをパパに安心して任せられると、ママの生活もグンとらくになりますね。成長して思春期を迎えるときにも、この乳幼児期からの親子の信頼関係がベースとなって子どもの心を支えることができるのです。

出産育児に伴って、夫婦の愛情曲線はさがりますが、パパが育児に協力的だと愛情曲線は持ち直し、協力していないグループとは大きな差が出ます。未就学児までの子育てに、パパがどのくらい関わったかということが、その後の夫婦関係に大きく影響するということです。

 

子どもはパパもママも大好き。そばにいる大人に愛して欲しいのです。好きな大人同士がもめていることは、子どもにとって大きなストレスになります。幼いゆえに「ボクが悪い子だから、パパとママがケンカしている」と自分のせいだと思ってしまったり、子どもの脳のキャパシティは小さいので心が不安でいっぱいになり、発達に必要な遊びや学びも楽しめなくなってしまうこともあります。子どもを情緒的に安定している中において育てることも、親の役目といえるでしょう。

夫(配偶者)との関係


パパとのコミュニケーション6つのヒント

 

パパと仲良く過ごせるように、以下のコミュニケーションを心がけてみましょう。

 

ストレスをためないで伝えよう
言わずにストレスをためるより、ちゃんとパパに気持ちを伝えよう。

 

ポジティブに伝えよう
文句として伝えるのではなく、前向きな提案の形で伝えよう。

 

「察して欲しい」と思わずに伝えよう
言わなければわからない。ちゃんと話そう。

 

やって欲しいことは
具体的に家事や育児は「これをやって欲しい」と具体的に伝えよう。

 

家事は少しずつやってもらおう
今まで家事をやっていないパパは、いきなり上手にできないことも。得意なこと、できそうなことから少しずつやってもらおう。

 

「ありがとう」を伝えよう
感謝されるとうれしいし、またやろうというモチベーションにつながる。

 

取材・文/高祖常子

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