◯さらばイクメン、共育のスタート

いわゆる「イクメンブーム」が起きたのが2010年ごろです。あれから約15年が経ちました。子育てを取り巻く環境はよくなったとは言い難い現状ではありますが、父親の育児についてはさまざまな変化が起きています。

その一つは子どもと関わるパパたちの姿を、多く見かけるようになったことです。ショッピングモールや公園などでも、ベビーカーを押しているパパや前抱きの抱っこひもで赤ちゃんと一緒に楽しそうに歩いているパパ達を見かけることが増えてきました。

プレパパママセミナーでも、多くがご夫婦で参加していらっしゃいます。その中で、あるパパが「妻が急に体調が悪くなったので僕だけの参加でもいいですか?」とパパ一人で受講くださいました。以前では考えられない光景です。懸命に赤ちゃん人形で沐浴の練習をしていました。

 

かなり市民権を得た「イクメン」ではありますが、ここにきてその役割を終えつつあります。厚生労働省は2010年、男性の育児休業取得率の向上を目指して、「イクメンプロジェクト」をスタートさせました。発足当時の男性の育児休業取得率は1桁台であり、社会でほとんど認識されていませんでした。しかし共働き家庭の増加や男性自身の意識変革、男女共同参画社会の到来など、さまざまな要因の変化の中で、ついに2025年度には男性の育児休業取得率は、過去最高の50%を超えました。政府の数値目標は30%だったので、一気に目標を達成したというわけです。

厚生労働省はこれまでの「イクメンプロジェクト」の終焉を宣言し、新しく2025年から「共育(トモイク)」プロジェクトをスタートさせました。

共育プロジェクトのHPには

【職場も家庭も、誰かひとりが負担を抱え込む「ワンオペ」から脱却し、みんなで「共に育てる」に取り組める世の中を目指します。】

という文言があります。

母親だけ、父親だけではなく、社会のみんなで子育てを支え楽しんでいく姿勢が、示されているのです。子育ての新しい時代と社会の到来を感じさせる、取り組みです。

 

◯これまでの父親の生き方と仕事

これまでは子どもを育てる男性の存在が、なぜ社会で認識されていなかったのでしょうか。いくつか理由が考えられますが、その最も大きな要因は「仕事中心の生き方」を男性が負わされてきたからと言えるでしょう。もちろん仕事はとても大切なことであり、生活の大きな柱です。しかしあくまで仕事は生活の中の一部です。家族を大切にしたり、子どもを育てることも生活の中には存在していますが、残念ながら高度経済成長期以降の日本では子育ては女性の仕事とされ、男性は仕事だけをしていればいいという風潮がありました。

しかしそのような生き方自体が時代や社会の変化に合わなくなってきたタイミングで、男性の育児が注目を浴びてきたわけです。これからの時代は男性も女性も仕事も、そして家族や子育ても大切にする生き方が求められてきます。生活の真ん中に自分を置いて、仕事も家庭もそして趣味や地域の活動など、さまざまなことを自らが主体となり積極的に楽しんでいく時代です。

これまで多くの男性は、自分の人生を生きることが「下手」だったのではないでしょうか。男性には「仕事中心の生き方」しか方法がなかった、他にロールモデルがありませんでした。それは本当に自分が望む生き方だったのでしょうか。

子どもの成長の素晴らしさを感じる、父親としての新しい生き方。「働く人」だけではなく、父親としての生き方も楽しんでほしいと思います。

 

◯これからの父親の役割

新しい時代の新しい父親の役割を、3つの視点で考えたいと思います。

 

1.子どもの絶対的存在

子どもにとって身近な信頼できる大人の存在は、その成長に欠かせないものです。もちろんそれは赤ちゃんの頃から大切なものです。一人の親として父親が積極的に、子どもとの関わりを大切にしましょう。その関わりが子どもを大きく成長させます。

2.母親と共に育てる

子育ては楽しいことも多いですが、同時に一人の人間を守り育てるとてもハードなものでもあります。それを母親のみに押し付けるのではなく、共に協力して育てることが大切です。大変さと喜び、この二つの共有があってこそ、夫婦が家族が作られていきます。

3.自分自身のウェルビーイング

子育てはとても楽しいものです。幼い子どもが日々成長をする過程は、何にも代えがたい喜びの一つです。そのことに一生懸命に関わることで、父親自身の生きがいや人生の喜びが実感できます。父親のウェルビーイングが大きく形成されることにつながるでしょう。

 

これまで「父親の育児」は、子どものためや母親のために行うという側面が強調されていました。それ自体は決して間違ってはいないのですが、父親の育児は、父親自身が幸せになるためにも存在しているのではないでしょうか。子育ては決して他のものでは代替できない、特別な営みです。せっかくその機会が与えられたのであれば、これを楽しまない手はありません。子育てしないなんてもったいないです。