世界遺産 グラン・プラス

ベルギーはEUの本部が置かれ、ダイヤモンドの流通拠点であることや、「フランダースの犬」の舞台であることなどで知られています。ヨーロッパの中心ともいえるベルギーの子育て事情について取材してきました。経済的な支援だけでなく、ワークライフバランスに配慮した驚きの休暇制度がありました。

ベルギーが位置する欧州は地続きのため、永い歴史の中で侵略や戦争を繰り返して国も国境もたびたび変化しています。ベルギーも1830年の独立革命でネーデルランド(オランダ)から独立し建国されましたが、北はオランダ語圏、南はフランス語圏、東はドイツ語圏と、地域によって異なる言葉・文化を持ち、一国の中で別の国のようです。
1993年に改訂されたベルギー憲法により「ベルギーは言語共同体と地域で構成された連邦制国家である」とされ、ブリュッセルはオランダ語・フランス語を併用する中立的な連邦首都として首都圏地域を構成しています。


EU本部

連邦政府は、財政、司法、軍事、外交など、連邦の利益に関する政策分野を担い、共同体政府は言語との結びつきが強い教育政策や子ども支援の一部の権限を持ちます。従って、教育や子育て・家庭政策は地域政府や共同体政府が決めます。

ベルギーの合計特殊出生率は2010年(1.86)頃までは上昇傾向にありましたが、その後は一転下降傾向にあり、2017年は1.68です。ベルギーは1つの国でありながら、子供支援や家族政策は共同体または地域レベルで行われているため、必然的に、共同体や地域により状況は異なります。

充実の子ども手当

表はブリュッセル地域の子ども手当です。フランダース地域もワロン地域も、ドイツ語共同体も多少の金額の差はありますが同様の手当が支給されます。進級時に文房具を買い足すための足しにということでしょうか、毎年8月に学校手当が支給されます。
2019年11月時点では1€=120円前後ですから、2020年からの金額でも日本の児童手当よりも高くなります。18歳になるまで支給される(しかも13歳から支給額が上がる)ので、経済的な支援は日本よりも充実しています。
2019年現在、子どもが3人いれば毎月約6万5千円が支給されていますので、家計は大助かりです。教育費や食費が掛かる中学生(12歳)から手当が増額されるのも日本とは反対で、実態に叶っています。

ベルギー家族手当

母親には15週間、父親には10日間の産休

ベルギーにももちろん、産休も育休もあります。父親の産休(父親休暇)もあります。フランスの父親休暇と似ていますが、フランスのそれが「父親になるための準備」期間であるのとはちょっと違うようです。

ベルギーでは、出産に際して女性は産前産後合計15週間(多胎児の場合には17週間)の産休が取られます。そのうち、出産予定日の7日前からは休暇取得が義務となり、産前は予定日の最大6週間前(多胎児の場合には7週間前)からの取得が可能です。産前の産休期間が6週間より短い場合は、その残りを産後に振り替えることができます。
産後は最低9週間産休を取る(取らせる)義務があり、産前からの繰り越しも含めると最長14週間まで延長が可能です。
母親の産休期間中は給与が出ないため、社会保険の運用会社(Mutualité)から最初の30日は給与合計支給額の82%(上限なし)、企業との契約関係がない人は79.5%が、31日目からは75%(上限あり)が支給されます。

一方、父親は10日間の産休取得が可能です。父親の産休は義務ではありませんが、取得すれば最初の3日間は雇用主が給与の100%を負担する有給休暇となります。残りの7日も給与の82%が社会保険の運用会社(Mutualité)から支給されます。そのため、父親の産休取得率は高いようです。また、10日間の産休はまとめて取る必要は無く、出産日から4カ月以内であれば分割しての取得も可能です。
日本では父親の産休は制度的には定まっていません。企業(あるいは行政組織など)ごとに特別有給休暇として定められているくらいです。

EUでは父親休暇の平均は2週間。2019年12月に発表されたジェンダーギャップ指数で1位だったアイスランドはなんと3カ月(育休ではなく!)です。ブルガリアとルーマニアでは、育児講習に参加しないと日数が大幅に減らされるという条件まで付いています。 

父母それぞれフルタイムで4カ月の育休

ベルギーの育休は、母親と父親がそれぞれに「フルタイム換算で計4カ月」取得可能です。フルタイムというのは1週間5日間の勤務を指し、このフルタイムを分割して育休が取れます。

取得希望者は、以下の4通りの取り方の中から自由に選択して取得できます。
①フルタイム勤務時間を完全に休みとして最高4か月(1週間単位で取得可能)
②フルタイム勤務時間の半分を休みとして最高8か月(1か月単位で取得可能)
③フルタイム勤務時間の5分の1(つまり週1日)を休みとして最高20か月(5か月単位で取得可能)
④フルタイム勤務時間の10分の1(つまり週半日)を休みとして最高40か月(10か月単位で取得可能)

ベルギーの小学校では水曜の午後に授業がないため、母親と父親がそれぞれ10分の1休暇を取得し、小学校の迎えに行ったり、午後の時間を一緒に過ごしたりしている例が多いといいます。

※育児休暇:日本では法律でも「育児休業」ですが、「Le congé parental」の翻訳として「育児休暇」としています。

>> 育休は長さ・所得保障よりも使い勝手の良さ