
育休は長さ・所得保障よりも使い勝手の良さ
休暇中は給与が出ない代わりに国家雇用局(ONEM)から定額の手当てが支給されます。民間部門の社員の場合の支給額(ユーロ総額/月 )は表の通り(2018年9月1日の数値)です。
育休期間中の手当の支給額は完全休暇で10万円ほどです。金額的な支援よりもむしろ、育休の取得パターンを多様にすることで使い勝手を良くし、家族のライフスタイルや夫婦の働き方に合わせた取得ができるように配慮しているようです。
こういう柔軟な育休取得を可能にしている背景にあるのは、夫婦間での協力に加え、保育所や託児所なども柔軟に対応できているということです。

育休期間中の月額支給額
ベルギーの育休は分割して12歳になるまで取得できます。そしてもう一つ別な制度もありました。
日本でも参考にしたいタイムクレジット
ベルギーではワークライフバランスを重視した休職制度が充実しています。「タイムクレジット(Crédit-temps)」制度と呼ばれ、もともとは1980年代に休職によってキャリアを中断させないようにとスタートした制度です。指定される「理由」 のいずれかを満たせば、誰でも休職することができます。タイムクレジットで認められる休職理由の一つに「8歳未満の子供の世話」が含まれているため、育児休暇※と混同される事も多いようです。タイムクレジットは、育児休暇とは全く別の制度となっており、取得方法や取得条件などが異なっています。
タイムクレジットの対象は、
①8歳未満の子供の世話
②緩和ケア
③身内の病気または深刻な健康上の問題の世話
④障害を持つ子供の世話
⑤身内の病気の未成年者の世話
⑥学業
いずれかの休職理由を満たす人は、生涯キャリアを通し、全ての理由により計最大51か月(子供の人数や休暇の取り方に関わらず)休職することができます。
育児休暇と(8歳未満の子供の世話を理由とした)タイムクレジットの主な違いの比較
タイムクレジット制度の下での休職期間は、
①完全休職(3か月単位で取得可能)
②2分の1休職(3か月単位で取得可能)
③5分の1休職(6か月単位で取得可能)
から選択します。育休にある「10分の1休職」は選択肢に含まれていません。
休職中は給与が出ない代わりに国家雇用局(ONEM)から定額の手当てが支給されますが、育休手当よりも低い額となっています。民間企業の社員の場合の支給額は以下の通り(2018年9月1日の数値)です。これだけで生活できるほどの額ではありませんが、休職すれば収入が途絶えて貯蓄を切り崩しながらの生活になるので助かります。
タイムクレジット休職中の手当額
ゲント大学 Michel-Vandenbroeck教授インタビュー

ゲント大学
日本にも度々招聘され講演をされているゲント大学のMichel-Vandenbroeck教授にお時間をいただくことができ、お話しを伺ってきました。教授はEUの育児支援政策に関しての研究をされているだけでなく、ベルギーの主要な育児支援政策のとりまとめをされています。
「これまでの子育て支援政策は数的な指標を追う政策決定をしていましたが、2018年4月に新しいターゲットを掲げ、現在は数的な達成率から内容・質(クオリティ)を求めるようになりました。
これまでの数的達成目標というのは、女性の社会進出をサポートする指標でした。それは見方を変えれば子ども自体に焦点が当たっていなかったので、新しい指標は子どもが幸福感を感じるか、子どもの気持ちに寄り添っているか、幼稚園・保育園の環境はどうか、 などに焦点を当てたものです。」

Michel-Vandenbroeck教授と編集長
ジェンダーギャップ指数から見えること
世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップ指数では、日本は世界121位と昨年よりも更に低位に沈んでいます。 レポートページに示されている「企業の取締役会の女性の割合」の図を見ると、1位のフランスは43.4%、ベルギーは30.7%で8位。対して日本は5.3%に過ぎません。これまでに取材に訪れた子育て先進国は、一番下位のカナダでも25.8%で15位です。これを見れば、女性の社会進出を受け入れる事と少子化対策は、セットで考えなければならないことが良くわかります。
ベルギーを始め上位の国は、女性の社会進出も子育て支援も既に数的目標からクオリティを問う段階に移っています。
※育児休暇:日本では法律でも「育児休業」ですが、「Le congé parental」の翻訳として「育児休暇」としています。
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