男女平等と個人を大事にする国

ノルウェーは、徹底した平等と個人主義の国。移民や難民の受け入れも多く、性別、民族、肌の色、言葉、宗教などによる差別や不平等をできる限り排除する社会を目指しています。大人はそれぞれが経済的に独立し、パートナーに依存せず(納税義務も別)、子どもも親からできるだけ早く自立していくという考え方が根付いています。

かつては「子ども・平等・社会統合省」のように、省名に「平等」が入った時代もありましたが、現在、子ども・家庭政策を担うのは「子ども・家庭省」(Barne- og familiedepartementet)です。男女平等・差別禁止の政策は2019年に文化省(現・文化平等省)に移管され、担当省の再編が行われましたが、「子どもの最善の利益」を国の政策の中心に置くという姿勢そのものは変わっていません。

現在、国会(ストーティング)議員や大企業の取締役会など、意思決定の場での女性比率を一定以上に保つ仕組みも維持されており、社会全体で機会の平等を担保する制度設計が続いています。

パパの育休は「取らないと損」が当たり前に

ノルウェーでは1977年に父親の育児休暇制度ができたものの、当初の取得率はごくわずかでした。転機になったのが1993年の「パパ・クオータ(父親割当)制度」の導入です。育休の一定期間を父親専用に割り当て、母親に譲渡できない仕組みにしたことで、取得率は導入直後の2〜3%から大きく伸びていきました。

現在の育児休業制度は次のような仕組みです。

  • 両親合わせた育休期間は、給与100%支給なら49週間、80%支給なら59週間から選択
  • そのうち出産前後の期間を含む一定期間は母親専用(母親クオータ)、一定期間は父親(またはパートナー)専用(父親クオータ)で、取得しなければ消滅し、相手に譲ることはできない
  • 100%支給を選ぶ場合は母親・父親それぞれ15週間、80%支給を選ぶ場合はそれぞれ19週間が専用クオータとなり、残りは両親で自由に分け合える「共有期間」
  • 育休を取得するには、原則、休業開始前10か月のうち6か月以上就労していることなどの要件がある
  • 就労実績がない場合は一時金(2026年時点で約9万2千クローネ※)が支給される 

 ※1ノルウェークローネ≒17円(2026年7月時点)

父親の育休取得率は現在も高水準を維持していて、多くの調査で7割台後半の父親が何らかの形で育休を取得していると報告されています。「取るかどうか」ではなく「どれくらい取るか」が話題になるほど、社会に定着した制度といえます。

希望すれば必ず保育園に入れる

妊娠・出産を理由に仕事を辞める人はほとんどいません。育休後は男女問わず、同じ職場の同じポジションに復帰できます。それを支えているのが、①保育園に必ず入れる、②働き方の柔軟性、③子どもの病気などで仕事を休める、という3つの保障です。

保育園(barnehage、英語ではkindergarten)は就学前幼児教育の場と位置づけられています。自治体は、親が入園を希望した場合は必ず枠を用意しなければならないと法律で定められており、日本のような待機児童問題は基本的に存在しません。1年間の育休が取れる社会前提のため、0歳児を預かる公立保育園はほとんどありません。

最新の統計では、1〜5歳児のうち保育園に通う子どもの割合は94%台まで上昇しており、1歳児に限っても8割以上が保育園に通っています。育休明けの早い時期から預け先が確保されている実態がうかがえます。

近年は保育料の面でも大きな変化がありました。国が定める保育料の上限(マックスプリス)は年々引き下げられており、2025年8月からはフルタイム利用で月額1,200クローネ※(地方の一部自治体はさらに低額、フィンマルク県などは無料)となっています。低所得世帯向けの減免や、きょうだい割引(2人目は原則7割引、3人目以降は無料)も整備されており、保育料の負担は大きく軽減されてきています。

 ※1ノルウェークローネ≒17円(2026年7月時点)

保育園での昼食は基本的に親が用意し、弁当を持参するスタイルは変わっていません。また、3歳未満の少人数の子どもを預かる小規模保育(familiebarnehager)の仕組みも引き続き自治体の認可・指導のもとで運営されています。

家庭で暮らせない子どもたちを支える仕組み――ファミリーホームと里親

ノルウェーでは、虐待や家庭内のリスクなど何らかの事情で親元で暮らせない子どもたちを、里親家庭(フォスターホーム)や、少人数の子どもが職員とともに暮らす施設(ファミリーホーム的な形態)で支える仕組みが整えられています。

政策としては、この10年以上、施設ではなく里親家庭での養育を優先する方針が続いており、実際に施設で暮らす子どもの数は長期的に減少傾向にあります。全国の統計では、施設で暮らす子どもの多くが13〜17歳のティーンエイジャーで、より複雑な支援ニーズを抱えるケースが中心となっており、幼い子どもはできるだけ里親家庭や、家庭的な環境に近い専門的な養育の場(専門里親・ファミリーホーム的な少人数養育)に委ねられる傾向が強まっています。

一軒家のような施設で暮らす子どもたちには、それぞれ個室が与えられ、友人を呼ぶことも自由という「普通の家」に近い環境づくりが重視されている点や、スタッフが専門的なトレーニングを受けた支援者であること、厳格な罰則を設けず、その都度良し悪しを伝えていくという関わり方は、現在も引き継がれている考え方です。子どもの親自身の回復支援に取り組む体制も、各地域の児童福祉サービス(バルネバーン)を通じて提供されています。

子どもの声を国に届ける「子どもオンブッド」

子どもの権利を守る独立機関として1981年に設立された「子どもオンブッド」(Barneombudet)は、世界で最初にできた子どものための公的オンブッド制度として知られています。国王(政府)が6年任期で任命する独立した立場のオンブッド1名と、教育・児童福祉・いじめ問題などの専門知識を持つスタッフ約20名で構成され、子どもの声を政治や行政に届ける役割を担っています。

子どもオンブッドの主な仕事は、暴力や虐待、いじめなどにさらされている子どもたちから直接話を聞き、テーマごとに子どもの専門家グループを作って議論を重ね、政策提案としてまとめて政治家や関係省庁に届けることです。すべての公共・民間の子ども関連施設への自由なアクセス権が法律で保障されており、国がノルウェーの子どもの権利条約(子どもの権利に関する国連条約)の遵守状況を監視する役割も担っています。近年は、いじめ・不登校・孤立、デジタル環境、災害やパンデミックなど社会の緊急事態が子どもに与える影響など、時代に応じたテーマにも取り組んでいます。

家族の時間を大切にする働き方

仕事は職種にもよりますが、15〜16時には終業することが多く、その時間帯には保育園や小学校の周辺が、お迎えの車でいっぱい(写真)になります。早く帰宅して子どもを迎え、17時頃には家族が揃って夕食や遊びの時間を過ごす一方、朝7時前後から働き始める人も多く見られます。自然が豊かな国柄もあり、週末に森へ散歩に出かけたり、山小屋(ヒュッテ)で過ごしたりする家族の姿は今も変わらぬ光景です。

家事・育児をパートナーと分担するのは当たり前という価値観も根強く、要職にある人ほど育休や有給休暇の取得を率先して見せることが、社会全体でのモデルになっています。

2015年に取材させていただいた漁業省の副大臣(取材時)アームンさんも、「要職にあっても、育休でも有休でも取るべきであり、トップが不在でも組織に停滞はあり得ません。私のプライオリティは、子どもです!」と週2~3回は子どものお迎えに行っているとのことでした。日によっては14時に帰宅するなど、子どもの時間を確保するためにフレキシブルな働き方をしていらっしゃいました。