おなかに新しい命が宿ったと分かったとき、あるいは生まれたばかりの我が子を腕に抱いたとき、胸がいっぱいになるような喜びと同時に、大きな責任感や不安を覚える方は少なくありません。
「私は良い親になれるだろうか」「この子のために、これから何をしてあげられるのだろう」と、目の前の小さな命を見つめながら自分に問いかける日々が始まります。
親になるということは、単に子どものお世話をする役割を引き受けることだけではありません。それは、子どもと一緒に自分自身も迷い、悩みながら、新しい自分へと育てられていく長い旅のようなものです。これから始まる愛おしい日々のなかで、私たちが親として子どもに手渡せる最高の贈り物は、特別な教育や高価な道具ではなく、身近で温かい、日々の暮らしのなかにあります。

完璧な親ではなく「ご機嫌な親」でいること

親になると、「完璧にこなさなければいけない」という見えないプレッシャーを感じてしまいがちです。離乳食はすべて手作りにしなければ、泣いたらすぐに泣き止ませなければ、部屋はいつも綺麗にしておかなければ……。そんな風に自分を追い詰めてしまうと、心も体も疲れて果ててしまいます。
子どもが求めているのは、完璧に家事や育児をこなすロボットのような親ではなく、目の前で微笑んで受け止めてくれる、温かい親の姿です。市販のベビーフードに頼っても、洗濯物が山積みになっていても構いません。親が心にゆとりを持ち、ご機嫌でいることこそが、子どもにとって一番の安心感につながります。
「まぁ、いいか」を合言葉に、まずは自分自身の心と体を労わることを最優先にしてください。親の笑顔は、子どもを包む一番の安全基地になるのです。

「あなたのままでいい」という安心感を育む

子どもがこれから生きていく長い人生のなかで、最も大切な心の土台となるのが「自己肯定感」です。自己肯定感とは、「自分はありのままの姿で愛されている」「ここにいていいんだ」と思える心の力のことです。この力を育むために親ができることは、日々の小さなスキンシップと、無条件の肯定です。
赤ちゃんが泣いたら抱きあげる、目が合ったら微笑み返す、おしゃべりを始めたらおうむ返しをし、「そうだね」と耳を傾ける……。
このような日常の何気ないやり取りの積み重ねによって、子どもは心に「自分は大切にされている」という確信を蓄えていきます。
他の子と成長のスピードを比べたり、早く何かをできるようにさせようと焦ったりする必要はありません。ただ目の前の我が子を見つめ、「生まれてきてくれてありがとう」という気持ちを肌の温もりを通して伝え続けること。それだけで、子どもは自分の足でしっかりと立って進む力を身につけていきます。

ひとりで抱え込まず、たくさんの手で育てる

「親になったのだから、自分が責任を持って育てなければならない」と、すべての重荷をひとりで背負い込もうとするのはやめましょう。ひとりの子どもを育てるには、たくさんの手が必要です。パートナーはもちろん、おじいちゃん、おばあちゃん、地域の保健師さん、保育園、子育て支援センターなど、周囲にある頼れる手はすべて、我が子を一緒に育ててくれる大切なチームのメンバーです。
親以外のたくさんの大人から「可愛いね」「大切だよ」と声をかけられて育つことは、子どもにとっても世界を広げ、豊かな社会性を育む素晴らしい機会になります。周囲に助けを求めることは、決して恥ずかしいことでも、親としての責任放棄でもありません。むしろ、子どもに豊かな環境を用意するための、親としての立派な選択です。つらいときは「助けて」と言える健やかな親の背中を見せることも、子どもへの大切な教育のひとつと言えるでしょう。

おわりに

親になるということは、予測不可能で、思い通りにいかないことの連続です。昨日まで上手くいっていたのに、今日は通用しなくなることも日常茶飯事です。だからこそ、子どもが見せてくれる一瞬の輝く笑顔や、小さな成長の足跡が、私たちの人生をこれ以上ないほど豊かに彩ってくれます。
子どもにしてあげられる最大のことは、大きな何かを成し遂げることではなく、ただ隣にいて、その存在を丸ごと愛し、一緒に泣いたり笑ったりすることです。肩の力を抜いて、我が子と歩むこれからの愛おしい時間を、一歩ずつ進んでいきましょう。