CASA DEL JAPON
CASA DEL JAPON
六本木通りを、溜め池から渋谷に向かって車を走らせ、
テレ朝通りの次の信号で、左に折れる。
狭い一方通行路を、50mも進まないところの右側に 数年前、
赤い扉の古い佇まいの家があった。
いや、正確には、古い家を改造したレストラン。
名前もズバリ、CASA DEL JAPON(カサ・デル・ハポン、日本の家)。
赤い玄関ドアまでは、十段ほどの石の階段。
その両側には、和紙を巻いてロート状にしたランプシェードの中心に、
蝋燭がゆらゆらと柔らかい光を放っている。
赤いドアを開け、六席しかないバーのカウンターに腰をかけた。
ビールを飲みながら、待ち人の到来を待つ。
後ろのテーブル席には、おそらくTV関係の人だろう、
いかにも業界関係の臭いを漂わせた、中年の男性が三人。
その後に入ってきたのは、これまた場違いな雰囲気の、若い女性の三人組。
薄暗い、静かな空間には、三組の、それぞれになにも共通する空気のない客が、い た。
仲間が揃い、席を2階の個室に移し、にぎやかな場となった。
やがて、例のごとくに、ムラちゃんが行動を起こした。
彼女の隣に、いつの間にか席を移し、しきりと口説きにかかっている。
ついに、携帯電話の番号を聞きだした様子だ。
他のみんなは、いつものことと、動じない。
3本目のバーボンのボトルが、1/4程になった頃、お開きとなった。
それぞれにタクシーに乗り込み、’家’を後にした。
ムラちゃんは、その夜、すぐさま携帯に電話したらしい。
きっと京都生まれの彼は、電話口で「スキヤ、スキヤ」いうてたんちゃうやろか。
日本の家は、数寄屋、と相場は決まっている。