ポリオから子どもを守る!
9月から、生ポリオワクチンから、単独不活化ポリオワクチンに接種が変更になりました。ポリオという病気について、また、なぜワクチン接種が必要なのか、小児科医の薗部友良先生に伺いました。
薗部友良先生
日本赤十字社医療センター小児科顧問。VPD(ワクチンで防げる病気)に対する一般の理解が薄く、ワクチンを受けないために命を落とす子どもが多いという不幸をなくそうと、「VPD を知って、子どもを守ろう。」の会を発足。著書に『育児百科』(主婦と生活社)他がある。
ポリオは人から人へと感染する病気です。感染してもほとんどの場合、症状はでませんが、まれに手や足に麻痺があらわれ、その麻痺が一生残ってしまったり、重症の場合は死亡する場合もある怖い病気です。
日本は30年以上にわたり野生型ポリオの発症は報告されていませんが、海外ではまだ発生している国があります。海外に行き来している現代。さまざまなルートから、ポリオウイルスが入ってくる可能性があります。
現在、ポリオには、特効薬など確実な治療法がありません。世界でポリオウイルスがゼロにならない限り、ポリオワクチンの接種によって、子どもを守ることが不可欠です。
●単独不活化ポリオワクチンの接種方法
◎接種方法
初回接種3回+追加接種1回の合計4回。皮下注射する。
◎スケジュール
【初回接種】生後3カ月から3〜8週の間隔をあけて3回接種する。
【追加接種】初回接種から6カ月以上あけて、1回接種する。
厚生労働省資料
今までは、病原性を弱めたポリオウイルスで作った生ポリオワクチンを接種していました。免疫をつける力はすぐれていたのですが、ポリオにかかったときと同じ症状(手足の麻痺)が出ることがありました。
そこで9月から、単独不活化ポリオワクチンが導入されました。この不活化ポリオワクチンが定期予防接種(※1)となり、無料(※2)でワクチン接種を受けられます。
不活化した( 生きていない)ウイルスから作られているため、ポリオと同様の症状(手足の麻痺)が出る心配はありません。ただし、発熱など、ほかの予防接種と同様の副反応はみられます。
●接種スケジュールはどうやって立てる?
生後3カ月になったら、できるだけ早く単独不活化ポリオワクチンの接種を受けましょう。すでに1回目の生ポリオワクチン接種をしている場合や、生後3カ月を過ぎているけれど、ポリオワクチン接種を受けていない場合など、いろいろなケースがあると思います。
お子さんのポリオワクチン接種歴を確認し、接種未完了の場合にはかかりつけ医に相談しましょう。
※1:法律にもとづいて、市町村が無料で実施する予防接種。
※2:現時点では、追加接種(4回目)は定期接種ではありません。
※3:平成23年度および平成24年度春の経口生ポリオワクチン接種対象者であったが接種を終了していない者、および平成24年9月以降に単独不活化ポリオワクチンの接種対象になる者。
単独不活化ポリオワクチンは、世界86 カ国で承認され、接種されているワクチンです。
生ワクチンから不活化ワクチンへの移行による、接種控えなども影響もあったため、平成24年度は約146万人(※3)がポリオワクチン接種の対象です。
子どもをポリオから守るためには、ワクチン接種が唯一の予防法です。ワクチンの副作用を気にされるママやパパもいますが、ワクチンを打たないことで、重症化したり、後遺症が残ったり、死亡に至ってしまうケースがあることをぜひ知って欲しいと思います。
子どものポリオワクチン接種歴を確認し、かかりつけ医と相談して、必要な予防接種を受け忘れないように、スケジュールを立てて接種しましょう。
取材協力/サノフィパスツール株式会社 イラスト/サカモトアキコ