2000/08/09更新
今日のエッセイ
スズカケの木

先週の、飲んだくれの会は、実は、日付けが変わる頃までは、
高尚な話題で盛り上がっていた。
音楽の話や、映画の話、特に、映画の話題では、盛り上がった。
同席の女性陣とは、一回りほど年齢が違うために、青春時代に見た映画も違う。
「ロバート・レッドフォードと、ポールニューマンのコンビは最高だ!」と、
メートルの上がってきた某氏が主張し始めると、そろそろ……………

話が、ジェームス・ディーンに及んだとき、
とうとう、うら若き我が女性軍は、反応できなくなってしまった。
ジェームス・ディーンを知らない! 結構ショックだった。

そんなことを思い出しながら、子ども達が寝た後のリビングでくつろいでいた。

甘いルックスで、jazz界のジェームス・ディーンと呼ばれた
チェット・ベイカーを知っている人は、少ないかも知れない。
しかし、jazz好きの人なら、みんな知っている名前。
1950年代、トランペット奏者として、一斉を風靡した彼は、
トランペットだけでなく、中性的なヴォーカルも魅力的だった。
そんな彼のレコードを聞こうと、久しぶりにレコードラックを探すが、見あたらな い。
何処へ行ったのだろう。
端から、順にレコードを見ていくと、あ、こんなのもあった、これも聞いてみよう 、
てな具合で、レコードの棚卸し状態に陥った。

かれこれ20年以上、僕とつき合っているYAMAHAのアンプ、
CA1000Vも ちっとも手入れしてやっていない。
よく見ると、子ども達のいたずらで、レバーがナナメを向いていたりする。
「コノヤロー」と思っても今更遅い。
とにかく、気を取り直して、レコードに針を落とす。
レバーはゆがんでいても、往年の名器は、今でも良い音を出す。
ゆっくりと、久しぶりにスコッチを飲みながら、
まるで初秋のような8月の夜風を、心地よく感じながら、jazzに浸った。

そういえば、学生時代、クラスメイトが、秋吉敏子のスズカケの小道が好きだった 。
翌朝、プラタナス(スズカケの木)の並木の下を歩きながら、思い出した。

過去のエッセイ
新しいエッセイ

 

伊達明のエッセーTOPへ