【こそだて】産科・小児医療の現場から

2008/12/04

授乳による虫歯について

よく、「離乳が遅かったから虫歯が多い」と聞きますが、本当でしょうか?
確かに、多くの育児書などでは、そのような事が記載されています。


さて、ここからは私の意見です。
そもそも虫歯は、スクロース(砂糖の主成分)を栄養源とする虫歯菌がこのスクロースを分解・栄養にし、歯を溶かす酸を出すことで起こります。簡単に言うと、口の中に住むバイ菌が、大好物の砂糖(スクロース)を食べて、排泄されるおしっこ(酸)が、雪を溶かすように歯を溶かしてしまう… って感じですか?
わかりますか?


さて、この虫歯の原因となるスクロースは、母乳や粉ミルクに入っているのでしょうか?


母乳中の糖分は、乳糖(ラクトース)が主成分で、口の中の虫歯菌の栄養源にはなりにくい事が知られています。ましてや、場合によってはヒトにそれを分解する酵素がない方もいるくらいで、この乳糖を分解できない方は、牛乳を飲むと乳糖を分解できないので腹を下すようです。しかし、乳糖は腸内乳酸菌やビフィズス菌の成育を促進し、さらに余った乳糖は他の細菌により乳酸となりpHが低下するため多くの病原菌の成育を阻害するとともにカルシウムの吸収能を促進するなど、良いことだらけのようです。


では、粉ミルクでは?
ところで、日本の粉ミルク会社は、虫歯になる製品を作るでしょうか? たぶん、スクロースを含んだものは避けるのが普通でしょう。やはり多くの資料からは、スクロースは含まれてはいないようです。


では、虫歯菌が出す酸と同じように、母乳や粉ミルク自体のpHが低いのでは?
母乳のpHは、初乳でpH 7.7、一ヵ月後以降でpH 6.8であるという報告があり、粉ミルクも中性付近のようです。


結論から言うと、私は、母乳や粉ミルクでは虫歯にはならないと考えます。


しかしながら、よく母乳と粉ミルクの飲ませ方と同じように飲料水を飲ませる事で、虫歯になることが知られています。
コカコーラなどはpH 3くらいで、歯が溶けだすと言われるpH 5.5以下であるため、虫歯菌がいなくても歯が溶けます。その他にpHが低い飲み物に、スポーツ飲料・果汁飲料・炭酸飲料などがあります。これらを、母乳や粉ミルクと同じように、子供が寝る前や長時間ダラダラ飲ませていると、歯が溶けてしまい、結果として虫歯になります。また、1歳前後になると食べ物を食べるようになり、歯の表面に虫歯菌が付きやすくなります。それが虫歯の原因であるようです。


これが誤解され、日本では「母乳や粉ミルクでは虫歯になるから」・「永久歯が育ちにくくなるから」ということで、普通、卒乳(断乳)が1歳前後と言われています。


では、世界では?
世界では断乳は少なくなっているようで、平均卒乳年齢は、4歳前後と言われております。
日本の考えだと、海外の子供は、乳歯が全て虫歯になってしまいますね。
海外の歯科医師は、忙しくなってしまいますね。


文献
日本小児科学会栄養委員会. 若手小児科医に伝えたい母乳の話. 日児誌 2007;111:922-941. 他


埼玉県日高市 あさひ歯科クリニック 患者様に感謝ですより


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